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2012年3月31日 (土)

がれき広域受け入れ問題

 最近の政府によるがれき広域受け入れキャンペーンは異常である。
 一方で、うちにはもってくるなというだけの議論もどうかと思う。
 そもそも「広域受け入れ」の対象は全体の2割。1年たっても処理が終わったのは6.7%というのは、一義的に被災地での処理が進んでいないことを示している。その責任を負うべき国が、責任逃れの議論のすり替えを行い、マスコミもそれに無批判にのっているという愚かしい光景が現出している。
 被災地を何カ所か見聞した限りでは、がれきの大半は仮置き場に移されていて、市街地はほとんどは土台だけ残った更地になっている。がれきが復興の妨げの最大要因になっているようには見えない。
 廃棄物処理の利権がらみの問題や、国こそが地元処理の推進を妨害しているということも次第に見えてきている。

 その中でまっとうと思われる意見や動きを紹介する。


■朝日2012年3月16日 がれき拒む社会
西日本に運ぶのは間違い 山内知也さん 神戸大学大学院教授

 すでに放射性物質が拡散してしまった東日本と、幸いにも汚染されなかった西日本では、区別して考える必要があります。
 東京では、岩手と宮城のがれきを受け入れた後も、焼却灰の汚染濃度にあまり変化はありません。これは、東京のごみが被災がれきと同じくらい汚染されているためです。千葉や群馬、茨城などが仮に受け入れても結果は同じでしょう。
 こうした汚染地域では、がれきの受け入れ問題より、身の回りからの被曝を滅らすための除染が大切です。
 私が東京都の公園で空間線量を調べたところ、地表から1メートルの空間放射線量が毎時0・9マイクロシーベルト検出された。局所的な汚染場所を見つけ、除染すべきです。
 西日本では、大阪府が受け入れを検討しているが、わざわざ放射性物質を運んでくるのは間違いです。日本の将来を考えたとき、被曝する人を1人でも滅らし、汚染されていない土地を残すのは重要だと考えます。
 がれきについた放射性物質が微量だとしても燃やすことで濃縮され、汚染灰が出ます。排ガスによる拡散も不安です。焼却施設にはダイオキシン対策のために付けたフィルターがあり、排ガス中の放射性物質をほぼ100%除去できるから、大気中への放出は心配しなくていい、と国は説明します。排ガスの放射性物質濃度が「不検出」との緒果も発表されています。
 しかし、不検出なのは計測時間が短すぎるためです。仮に、国が言うように99・9%以上除去したとしても、完全に放出をとめているわけではない。濃度が小さくても焼却炉のガス排気量は大きいため、相当量の放射性物質が流出する恐れがあります。周辺住民が受ける放射線量は低いかもしれないが、汚染が広がります。
 がれき処理の遅れが、一部の被災地で復興の妨げとなっているのは確かです。仮置き場が満杯のため、半壊家屋が街に残ったままの地域もある。しかし、家屋解体も進み、仮置き場への搬入がほぼ終わった自治体も多い。街づくりを同時に進めることはできるはずです。
 そもそも、がれき処理が遅れているのは、広域処理が進まないことが原因ではない。広域処理の予定量は全体の約2割にあたる401万トンに過ぎません。最大の原因は、被災地でのがれき処理の体制整備に時間がかかっていることでしょう。
 解決のためには、被災地で高性能なフィルターが付いた大型焼却施設の建設を増やすべきです。大きなお金が落ち、雇用も期待できます。発電装置を備えた焼却施設をつくれば、がれき処理を終えた後も、森林の間伐材を使った木質バイオマス発電として活用できます。安全対策を徹底し、復興につながるかたちで処理を進めるべきです。(聞き手・岩井建樹)


一方で政府もまともなことも言っている。最初からこちらが推進すべき本筋の話だ。
■朝日2012年3月13日 がれき積極利用 首相指示 閣僚会合 防潮林・高台整備など

 東日本大震災で発生したがれき処理を進めるため、野田政権は13日、第1回の関係閣僚会合を開いた。野田佳彦首相は「今までの発想を超えて大胆に活用してほしい」と要請。関東大震災のがれきで横浜市に山下公園を整備したエピソードを引き、将来の津波から住民を守る防潮林の盛り土や避難のための高台の整備、道路などの材料として、被災地のがれきを再利用していく考えを示した。
 細野豪志環境相は会合後、「鎮魂の気持ちとともにがれきを処理していく」と述べ、まず防潮林としてがれきを利用する準備に取りかかる方針を示した。環境省は、復興のシンボルとして三陸地方の自然公園を再編する「三陸復興国立公園」(仮称)の整傭にも活用する方針だ。
 このほか、セメントや製紙業など、焼却設傭を持つ民間企業にも協力を求める方針を確認。経済産業省はこの日、関係する業界団体に要請文書を送った。同省によると、汚泥をセメントの原料にしたり、木くずなどを製紙業のボイラー燃料にしたりして、2月20日現在、企業が約10万トンのがれきを処理したという。
 会合では、今週中にも全国の都道府県や政令指定都市に対し、がれき処理に協力を求める首相名の文書を出す方針を確認した。前向きな自治体に対しては、被災地の自治体名やがれきの種類、量などを明示し、具体的に受け入れを求める。
 被災3県で発生したがれき約2253万トンのうち、処理が終わったのは6・7%にすぎない。処分場の不足、放射能汚染の不安などから広域処理も進まず、本格的な受け入れが始まっているのは東京、山形、青森の3県だけだ。


■日刊ゲンダイ2012年3月22日 「絆」で瓦礫は処理できるのか 田中康夫 
 処理出来た瓦礫は僅か6%、と細野豪志氏。だから20%は国民全体で分かち合う「絆」を、と野田佳彦氏。その「大政翼賛」が完遂しても処理分量は全体の4分の一。政府が示すべきは残り74%を被災地で如何に処理するかの工程表。「広域処理」=無為無策な「政治主導」の失敗を目眩ますキャンペーン!
 小学生でも抱く"素朴な疑問"を僕は140字でツイートしました。
 他方、JR川崎駅前で環境省が開催した「みんなの力でがれき処理ブロジェクト」街頭イヴェントで細野氏は「このままでは2年で処理出来ない。1日でも早く瓦礫を無くしたい」と絶叫し、TVキャスターから神奈川県知事に転身した黒岩祐治氏も「瓦礫受け入れが日本の絆を世界に発信する」と唱和。劣化し続ける日本の政治と行政は、情念・情緒の世界に迷い込んでいます。
「(被災地以外の地域が)受け入れない理屈は通らない」と言う細野氏は、20%=400万トンの瓦礫を10トントラックで全国に運搬したなら40万台、の驚愕すべき現実を再認識すべき。にも拘らず、被災地が求める焼却場の建設を事実上、政府は却下し続けています。
 被災地の瓦礫処理は飽く迄も一時的な事業と政府は規定。事業終了時迄の仮設焼却場整備ならば相談に応じるが、常設焼却揚建設は域内の人口等設置要件を満たさねばならず、仮に設置後10年未満で財産処分の場合は交付金の国庫返還を求めているのです。が、この「規定」こそ、「三位一体改革」を掲げて小泉純一郎氏の時代に創設の「循環型社会形成推進交付金」なる"飴と鞭"がもたらした自家撞着の悪夢に他なりません。
 起債償還時の後年度交付税措置も含め、建設費用の7割を国庫負担する制度の下、24時問燃やし続けねば施設機能に支障を来す、身の丈を超えた巨大焼却施設が全国各地に林立しました。
 市町村、並びに複数自治体が「一部事務組合」を設置して運営する焼却施設は日本全国に1242。内879施設が全連続式、準連続式。一日動かすと電力需要が少ない深夜も稼働を止められない原発同様、「需給」に拘らず動かし続けねばならぬ全国各地の処理場は、燃やし続けるゴミの確保を切望しているのです。「瓦礫処理は日本人の国民性が試される」と野田佳彦氏は会見し、「(受け入れ自治体の)焼却場の減価償却費も更に国が支援」と細野氏が述べる、それが深意。「震災復興の闇」と僕が述べる所以です。(水曜掲載)

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